【児玉】調和平均

こんにちは、児玉です。

次の問題に答えよ。

【問】
自宅から遠く離れた兼六園まで自動車を使って往復するのに、
行きは時速$30$km、帰りは時速$50$kmの速さで移動した。
途中、止まったりせずに一定の速さで移動したとすると、平均の時速は何kmであるか。

(解答)
$(30+50) \div 2 =40$

 答 時速$40$km

いや、さすがにほとんどの人がこれは違うと思い、最初から別の計算をしようと思ったことでしょう。

「距離によって違うのではないか?」と。

では、計算しやすいように$30$と$50$の公倍数で考えてみましょう。
仮に片道$150$kmとします。
すると、行きは、
$150 \div 30 = 5$ で$5$時間
帰りは、
$150 \div 50 = 3$ で$3$時間
往復$300$kmを合計$8$時間掛かったので、$300 \div 8 = 37.5$となり、平均時速は$37.5$kmですね。

では、距離を変えて再計算してみましょう。
これも計算しやすいように、片道$300$kmとしましょう。
片道だけで、F1レースの走行距離くらいありますが…

行きは、$300 \div 30 = 10$ で$10$時間

帰りは、$300 \div 50 = 6$ で$6$時間
往復$600$kmを合計$16$時間

もう、お解りですね。
距離を$2$倍にすると、掛かる時間も$2$倍になるので、往復の平均速度は同じになります。

文字を使って確認しましょう。
片道$a$kmとすると、$$行きは、\frac{a}{30}時間$$
$$帰りは、\frac{a}{50}時間$$
となり、合計では、
$$\frac{a}{30}+\frac{a}{50} = \frac{5a}{150}+\frac{3a}{150}=\frac{4a}{75}時間$$
往復で、$2a$kmを$$\frac{4a}{75}時間$$で走破したわけですから、
$$2a \div \frac{4a}{75} = 2a \times \frac{75}{4a} = \frac{75}{2} = 37.5$$
と、$a$が消えてしまいますので、距離が関係していないことが判ります。

通しで、式を立てて計算してみると、
$$\frac{2a} {\frac{a}{30}+\frac{a}{50}} = \frac{2} {\frac{1}{30}+\frac{1}{50}} = \frac{75}{2} $$

真ん中の、
$$\frac{2} {\frac{1}{30}+\frac{1}{50}}$$
は、次のように変形できます。
$$\frac{1}{\frac{\frac{1}{30}+\frac{1}{50}}{2}}$$
これは、$30$の逆数$\frac{1}{30}$と$50$の逆数$\frac{1}{50}$との算術平均(相加平均)の逆数であると解釈できます。
これを$30$と$50$の調和平均と呼びます。

一般に、正の実数について、その調和平均は次のように定義されます。
正の実数$ x_{1},x_{2}, …,x_{n}$について、調和平均$H$は
$$ H = \frac{n}{\frac{1}{x_{1}}+\frac{1}{x_{2}}+…+\frac{1}{x_{n}}} = \frac{n}{ \displaystyle \sum_{i=1}^{n}\frac{1}{x_{i}}} $$
と定義され、これは 各逆数の算術平均の逆数であり、
$$ \frac{n}{H}=\displaystyle \sum_{i=1}^{n}\frac{1}{x_{i}} = \frac{1}{x_{1}}+\frac{1}{x_{2}}+…+\frac{1}{x_{n}}$$
とも書けます。
この方がスッキリとしていて見やすいですかね。

ところで、次の式、どこかで見たことありませんか?
$$ \frac{1}{R}=\frac{1}{R_{1}}+\frac{1}{R_{2}}+…+\frac{1}{R_{n}} $$
そう、電気抵抗の並列接続における合成抵抗値の計算式です。
$n$ 個の抵抗器の各抵抗値$R_{1},R_{2},$…$,R_{n} $の調和平均の逆数を$n$で割ったものですね。
つまり、$R_{1},R_{2},$…$,R_{n} $の調和平均を$H$とすると、合成抵抗は、$H$Ωの抵抗器を$n$本並列につないだに等しいということになります。
例えば、$10$Ωと$15$Ωの$2$本の抵抗を並列につないだ場合、
$10$と$15$の調和平均は、
$$ \frac{2}{\frac{1}{10}+\frac{1}{15}} = \frac{2}{\frac{5}{30}}=\frac{2}{\frac{1}{6}}=12 $$
ですから、$12$Ωの抵抗を$2$本並列につなぐことに等価であり、従って合成抵抗値は、$12 \div 2 = 6$Ωとなるわけです。

このように、平均といっても何種類かあり、テスト点数の平均などは先程の算術平均(相加平均)を使いますし、高校数学で習う相乗平均(幾何平均)や、食塩水の濃度計算などで使っている加重平均と、そして今回の調和平均があります。
高校数学で調和というと、調和数列のほうが馴染みがあるかもしれません。
いずれ機会がありましたら、これらの平均についても書いてみたいと思います。

それでは、また。

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