読解力がないことの恐ろしさ

こんにちは、金沢市国語塾です。

昨今、読解力低下が叫ばれています。

読めない、文意を理解できない子が増えているようです。

では、読めないとどうなるのか。

今日は読解力にまつわる面白い記事を見つけたので、その紹介がてら書いていこうと思います。

読めないとはこういうこと

まず、ある2つの文章を紹介します。

A 義経は平氏を追い詰め、ついには壇ノ浦の戦いで滅ぼした。

B 平氏は義経に追い詰められ、ついには壇ノ浦の戦いで滅ぼされた。

この2つの文章は、同じ意味でしょうか?

もしお子さんが近くにいらっしゃれば、ぜひお子さんにも聞いてみてください。

正解はもちろん、同じ意味です。

ですが、この文が同じだと分からない子が40%いる、という研究結果があります。

5人に聞いたら2人は分かっていない、ということです。

次に、最近見つけたこちらのニュース記事からの紹介です。

「2で割り切れる数=偶数を0、8、65、110から全部選べ」正答率は小6が一番高く60%でも会社員が33%と低い訳【2025年9月BEST】 「誰でも読めばわかるはずの文章」を大人が読めない理由
文字を追うことはできても、きちんと読解できたとは限らない。それは子供だけでなく、大人も同じだ。AI研究者の新井紀子さんは「調査の結果、AI時代に必須のリーディングスキルが身についていない会社員は少なくないことがわかった」という――。

この記事は「シン読解力 学力と人生を決めるもう一つの読み方」から抜粋、再編集されたものです。

本の著者、新井紀子さんはAI研究者です。

記事中にも紹介されている通り、AIの可能性と限界を探るため、「AIは東大に合格できるのか」ということをテーマに研究されています。

ちなみに、先ほどの平家と義経の文章も、新井紀子さんの研究によるものです。

AIに日本語を学習させたノウハウを応用して、「リーディングスキルテスト」というものを開発し、調査と分析を行ったそうです。

その調査の1つとして、次のような問題がありました。

次の文を読みなさい
 2で割り切れる数を偶数という。そうでない数を奇数という

偶数をすべてえらびなさい。
① 8
② 110
③ 65
④ 0

正解は、①、②、④です。

正答率は、小学6年生が最も高く60%だったとの事。

ですが、学年が上がるごとに正答率が下がり、中学3年生では28%まで落ち込むようです。

そして、高校生になっても正答率が改善せず、との事です。

ここで、「ん、0も偶数なの?」と思った方もいるかもしれません。

が、定義にのっとれば、0÷2=0と割り切れるので、偶数です。

つまり、定義を正しく読み取れていないゆえのミスなのです。

ちなみに、先ほどの問題は、大人でも3人に2人は間違えていたそうです。

読解力がないのは「今の子」だけではない、ということです。

もう1つ。

次の問題も記事からの抜粋です。

高校の社会科の教科書が出典で、中学生以上に出題された問題です。

次の文を読みなさい。

資金が不足している経済主体と、資金に余裕がある経済主体との間で資金を貸し借りするのが金融である。金融は資金の貸し手と借り手が直接に資金を融通し合う直接金融と、銀行などの金融機関を介して資金の貸し借りを行う間接金融に大別される。

直接金融を利用している主体(人や会社)として当てはまるものを以下の選択肢からすべて選びなさい。

① A銀行に預金している中学生
② 祖父母からお年玉をもらったBさん
③ C銀行に勤めている人
④ D大学から奨学金を借りた人

分かりましたでしょうか?

正解は④だけです。

しかし、②を選んでしまう人がとても多かったらしく、全体の正答率が21.4%だったの事。

これも、定義を正しく読み取れていないことが原因です。

お金の「貸し借り」の部分が正確に読めていれば、②を選ぶことはないはずです。

読解力がない、とは、こういうことです。

定義を正しく読解できていない

これらのことが示すのは、

定義を正しく読解できていない子が一定数いる

ということです。

一定数と書きましたが、記事の研究を見る限り、かなりの数いると思います。

つまり、今までケアレスミスと見逃してきたミスが、理解できていないゆえの誤答だった可能性があるわけです。

うっかり違うものを選んだのではなく、理解していない。

覚え間違いではなく、理解していない。

ゆえに、間違えていた。

定義が読めていなかったがために、何度も同じミスをしてしまっていた。

そう考えると、恐ろしくありませんか?

いつまでも繰り返しミスしているところは、同じように「定義を読み間違えている」可能性があります。

勘違いではなく、定義を読めていないかもしれないととらえるべきなのです。

読めていないことに気付かない

この記事の後半、少し興味深い内容があったので、抜粋します。

この問題で正解の「奨学金」と「お年玉」の両方を選んで間違えた、ある大人の方が「やはり金融教育が不足しているからですかね……」とおっしゃいました。

いいえ、違います。

その方は大企業で働いています。金融機関に口座を持ち、月々の給料は自分の口座に振り込まれています。マンションを買ってローンを組んでいます。お子さんが、自分の親からお年玉をもらうのも見ているでしょう。そのような経験があるのに、この問題を間違えるというのは、「習っていないから」、「経験がないから」ではなく、「読めなかったから」、「読み方を正しく学んでこなかったから」以外の理由は考えにくいと思います。

先ほどの問題に間違えた人が、「知識がないから間違えた」と答えたということです。

おそらくこの方は、自分が読めていないと思っていないのだと思います。

新井氏が指摘するように、知識がないということはないはずです。

定義を読めていないことに気付いていないが故の、「知識不足で間違えた」という言葉なのだと思います。

同じように、自分が読めないと思っていない人は大勢いると思います。

大人でさえそうなのですから、子どもならなおさらです。

どんな科目においても、まずは正しく読めているか、確認してあげることが大事です。

お子さんの解答において、同じミスが続いているようであれば、定義を正しく読めているか確かめてあげてください。

読解力がないが故の成績不良

以前のブログに、国語だけできない子はいるが、国語だけできる子はほとんどいない、という話を書いたと思います。

その理由が、この記事で書かれていることなのかな、と思います。

国語ができる子は、定義を正しく読み取れている。

ゆえに、他科目においても同じミスを繰り返すことが少ない。

定義を理解できているので、問題の解き方さえ理解すれば、その解き方通りに解ける。

もっと言えば、その「解き方」も正しく読み取れているので、応用もできているのだと思います。

反対に、読解力がなく、定義を読めない子は、同じ問題で何度もつまずく。

解き方を聞いても、定義の部分で間違えているから、正解にたどりつかない。

ただ教え込まれただけの状態なので、教えてもらってもすぐに抜けてしまい、定着しない。

だから、なかなか成績が上がらないのでしょう。

定義を正しく読み取ること自体は、高度な読解力が必要というわけではないと思います。

特に、小学校中学校で習うような定義は、そこまで複雑ではありません。

ある程度の読解力があれば、読み間違える、ということはないはずです。

ですが、その「ある程度」すら読解力がない子は、どの科目においても苦労することになるのではないかと思います。

どの科目もなかなか点数が上がらない。

もしお子さんがそういう状態であれば、まずは定義を正しく読めているか、よく確認してあげてください。

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